献花も供花もどちらも故人への哀悼の意を表す方法ですが、その意味や使われる場面には違いがあります。本記事では、献花と供花の違いを解説し、葬儀や追悼の場での献花を行う際のマナーについても紹介します。正しい知識をもち、心を込めて故人を偲ぶため、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
仏式では献花をしない?日本ではなじみの少ない献花とは
「献花(けんか)」とは、故人への弔意を表すために霊前に花を捧げる行為です。
弔花(ちょうか)や香花(こうばな)、香華(こうげ)などと呼ばれることもあります。献花は、キリスト教式の葬儀や無宗教のお別れ会、慰霊祭などで行われることが多く、最近ではホテルや会館での葬儀でも代わりに献花が行われるケースが増えています。
とくに、焼香が禁止されている場所で代替的に使われることがあります。一方、仏式の葬儀では「焼香(しょうこう)」が行われるため、献花は行いません。仏式では故人への供養の一環として香を焚くことが重要とされており、これが「焼香」の儀式に当たります。
焼香は仏教の修行や供養の一環であり、亡くなった方の魂を鎮め、遺族や参列者が自身の心を清めるためのものとされています。そのため、仏教の葬儀では献花ではなく、焼香が中心となるのです。
また、神式の葬儀では「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」という、玉串を神前に供える儀式が行われます。このように、日本の伝統的な宗教的儀式では、献花はあまり馴染みがないのが現状です。
日本での献花は、もともとキリスト教の影響を受けて行われるようになったもので、近年では無宗教やお別れ会、慰霊祭などでの一般化が進んでいます。
とくに、故人が好きだった花を用意して献花することもあり、故人の生前の趣味や好みに合わせた形でお別れの気持ちを表すことができることが特徴です。献花で使用されるのは、白いカーネーションや白いユリ、菊などが一般的です。
これらの花は長持ちし、見た目が美しいため、葬儀の場に適しているとされています。一方で、ダリアのようにすぐにしおれてしまう花や、薔薇のように棘がある花は避けられる傾向があります。また、造花の使用もNGとされています。
献花と供花はなにが違うのか
「献花」と「供花」は、いずれも故人に花をささげる行為を指しますが、対象や意味に違いがあります。
献花はおもに故人の霊を慰め、安息を祈るために行われます。一方、供花は葬儀会場や祭壇に飾られる花で、故人への弔意を示すだけではなく、遺族への慰めや会場の装飾としての役割ももっています。
すなわち、献花は「故人」に対して花をささげる行為であり、供花は「故人と遺族」に対して花を供えることです。献花と供花は、それぞれの目的や対象に応じた違いがあるため、混同しないよう注意が必要です。
献花をする際のマナーは?
献花は、故人への敬意を表す大切な行為です。
正しいマナーを守ることで、故人やそのご家族に対する礼儀を尽くすことができます。献花を行う際の基本的なマナーについて説明します。
用意された花を使う
多くの葬儀や法要では、主催者側があらかじめ献花用の花を準備していることが一般的です。
参列者が各自で花を準備する必要はなく、むしろ勝手に準備することは失礼にあたる場合があります。故人の好きだった花を選びたいと感じる方もいるかもしれませんが、用意された花を使いましょう。
献花用の花を受け取る際のマナー
花はスタッフから手渡されることが多いですが、たとえ渡された花が1本だったとしても、必ず両手で受け取りましょう。
さらに、花を受け取った後は、献花の順番を待つ間も両手で持ち続けるのがマナーです。片手で花を持ちながらほかのことをしたり、花を置いたりすることは失礼とされます。
まとめ
献花は、故人を偲び、心からの別れを告げるための重要な儀式のひとつであり、日本でも徐々にその認知度が高まっています。とくに宗教にとらわれない現代の葬儀スタイルにおいて、献花は柔軟に取り入れられることが多くなっています。しかし、献花の際はマナーを守ることが大切です。故人への敬意を表すだけではなく、ほかの参列者やご家族への思いやりも示すことにつながります。正しいマナーを理解し、それを守ることで、故人を偲ぶ場をより尊重できます。