日本の仏教にはさまざまな宗派があり、それぞれ独自の葬儀の儀式や文化が存在します。この記事では、臨済宗の葬儀に焦点を当て、その特徴や流れ、マナーや作法について詳しく解説します。臨済宗の葬儀は、亡くなった人が仏の弟子となり、修行の道に入る儀式と位置づけられており、独自の儀式が多く含まれています。
臨済宗の葬儀の特徴
臨済宗の葬儀は、ほかの宗派と比べて独自の特徴をもっています。
まず、臨済宗では葬儀は故人が仏の弟子となり、修行の道に入る儀式と位置づけられています。この点がほかの宗派と大きく異なります。仏教の教えを理解し、仏性に目覚めることが重要視されており、そのための儀式が行われます。
引導の儀式は、とくに注目すべき要素です。儀式の中で導師が「喝!」と叫び、故人の未練を断ち切り、仏の世界へと誘う瞬間として捉えられています。また、松明に見立てた赤い棒を回し投げる行為も、未練や煩悩を浄化し、悪霊を払う象徴的な儀式です。
臨済宗の葬儀には音楽による供養も特徴的で、妙鉢や太鼓が鳴らされます。このような特異な要素が臨済宗の葬儀を彩り、感動的なものにしています。
臨済宗の葬儀における作法とマナー
臨済宗の葬儀に参列する際には、特有の作法とマナーを知っておくことが重要です。
焼香の回数は1回が基本で、ほかの宗派と異なる点です。焼香の際、抹香を香炉に入れる際には、仏前で合掌礼拝をするのが一般的です。数珠の持ち方も注意が必要で、左手の手首にかけ、合掌時には数珠を二重に持ち、左手の親指と人差し指の間に数珠をかけます。
香典の表書きについては、四十九日までは「御霊前」、それ以降は「御仏前」と記入します。墨の色にも注意が必要で、葬儀では薄墨を、法要では黒墨を使用することが一般的です。
これらのマナーや作法を守ることで、臨済宗の葬儀に参列する際に失礼のないように心がけましょう。マナーや作法は、故人への最後のお別れを尊重する大切な手段です。
臨済宗の葬儀の流れとは?
臨済宗の葬儀は、独自の儀式と流れを持っており、以下のように進行します。
>■ 入場
導師と式衆が入場し、葬儀が始まります。
>■剃髪(ていはつ)
導師が剃刀を持ち、剃髪の偈を唱えます。この儀式では、故人が仏の弟子としての道を歩む準備が行われます。
>■ 懺悔文(さんげもん)
授戒の儀式で、故人の過去の行いを懺悔し、小さな罪を反省し、安らかに成仏することを願います。
>■ 三帰戒文(さんきかいもん)
仏教の教えに帰依し、仏・法・僧に誓いを立てる儀式です。
>■三聚浄戒(さんじゅうじょうかい)
酒水器に移した法性水を棺に注ぎ、酒水灌頂を行います。これは十重禁戒(じゅうじゅうきんかい)の一部です。
>■入龕諷経(にゅうがんふぎん)
納棺の際に行われる儀式で、通夜ではなく葬儀で行われます。大悲呪(だいひしゅう)と回向文(えこうもん)が読経されます。
>■ 龕前念誦(がんぜんねんじゅ)
棺を閉ざす際に行われる儀式で、十仏名(じゅうぶつみょう)と大悲呪、回向文が読経されます。
>■ 鎖龕諷経(さがんふぎん)
棺の蓋をする際に、大悲呪を読誦し、回向文を読経します。
>■ 起龕念誦(きがんねんじゅ)
出棺の際に大悲呪を読み、回向文を唱えます。
>■ 山頭念誦(さんとうねんじゅ)
葬場である山頭で行われ、成仏を願い、往生咒(おうじょうしゅ)を唱え、妙鉢や太鼓などの楽器で供養します。
>■引導
導師によって浄土へ送り出す引導法語が唱えられます。
>■焼香・出棺
観音経や大悲心陀羅尼、楞厳呪などが唱えられる中で焼香が行われ、その後、出棺が行われます。
>■ 退場
導師と式衆が退場し、葬儀は終了します。
以上が臨済宗の葬儀の一般的な流れです。地域や寺院によって細かな違いがあるかもしれませんが、この基本的な流れを把握することで、臨済宗の葬儀に参列する際に適切なマナーや作法を守ることができます。
まとめ
臨済宗の葬儀は、ほかの宗派と異なる独自の特徴を持ち、感動的な儀式となっています。亡くなった人が仏の弟子になり、仏の世界へと導かれる過程や、特有の作法やマナー、儀式の流れを知ることで、その深い意味を理解できます。臨済宗の葬儀に参列する際には、これらの要素を尊重し、故人への最後のお別れを心から捧げましょう。感謝と共感の気持ちを込めて、故人の安らかな成仏を願いましょう。