
葬儀の場において言葉選びは慎重にならなければなりません。とくに「忌み言葉」と呼ばれる不適切な表現には注意が必要です。これらの言葉は葬儀の場にふさわしくないとされ、故人や遺族に不快な思いをさせる可能性があります。この記事では、葬儀で避けるべき忌み言葉とその理由について解説します。
葬儀での使用は避けたい「忌み言葉」
葬儀の場では、故人の死を悼み、ご遺族に心からの弔意を示すことが大切です。
そのため、言葉選びには慎重を期す必要があります。とくに避けるべきは「忌み言葉」です。忌み言葉とは、縁起が悪い、または不幸を連想させる言葉であり、ご遺族をさらに悲しませる恐れがあります。
たとえば「再び」や「また」といった重なる不幸を連想させる言葉、「死」や「終わり」といった直接的で不吉な言葉などは忌み言葉に該当します。さらに、こうした忌み言葉は宗旨や宗派によって違いがあるため、事前に確認しておくと安心です。
また、葬儀の場では必要以上に言葉を多くせず、簡潔にお悔みの言葉を述べ、礼儀をもってお焼香をし、深くお辞儀をすることで弔意を示しましょう。多くを語らずとも十分に気持ちは伝わります。
忌み言葉の代表例と言い換え方
忌み言葉にはおもに5つの種類があります。
慎重に言葉を選びつつ、お悔やみの気持ちを伝えるためにも代表的な忌み言葉とその言い換え方をチェックしておきましょう。
重ね言葉
重ね言葉とは、同じ言葉を繰り返すことで、不幸が重なることを連想させるため、避けられる表現です。
たとえば、「重ね重ね」は「深く」に言い換え、「ますます」は「加えて」や「一段と」と表現するのが適切です。同様に「次々と」は「ひっきりなしに」へ、「みるみる」は「見る間に」などと置き換えることができます。
続き言葉
続き言葉は不幸が続くことを示唆するため忌み嫌われます。
具体的には、「再び」を「今一度」に、「引き続き」を「これからも」に言い換えるのが望ましいでしょう。「何度も」は「頻繁に」と、「追って」は「後ほど」に置き換えることで、不適切な印象を避けることができます。
死を連想する言葉
死を直接的に表現する言葉は、遺族をさらに悲しませる可能性があるため、特に注意が必要です。
たとえば、「死ぬ」や「急死」という直接的な表現は避け、「ご逝去」や「突然のこと」といった丁寧な表現を使います。また、「生きていた頃」という言葉も、「ご生前」や「お元気だったころ」など、間接的かつ敬意を持った表現に言い換えることで、配慮のある言葉遣いとなります。
不吉な言葉
故人の人生を振り返ったとき、つい「苦労の多い人生でした」などの言葉を使いがちですが、「大変」や「苦労」のような表現も、代わりに「多用」や「努力」などに言い換えたほうがベストです。
「辛苦」や「消える」も避け、「楽ではない」や「失われる」とすることで、より適切な表現ができます。また、「四(死)」や「九(苦)」など、連想させるものが不吉な数字も避けたほうが無難です。
宗教的配慮
宗教や宗派によって忌み言葉が異なる場合があります。
仏教では「浮かばれない」や「迷う」が忌み言葉となるため「ご冥福」を広く用いますが、浄土真宗では「お悔み申し上げます」が適切です。キリスト教では「冥福」や「成仏」ではなく、「召天」や「帰天」が使われます。故人や遺族の宗教に配慮することも大切です。
案内状などの作成時にも注意が必要!
弔事の案内状を作成する際にも、当然忌み言葉に注意しなければなりません。
文章であっても「相次いで」「重ね重ね」などといった言葉は避けましょう。また、二重封筒は目上の方への改まった手紙では適しているとされていますが、忌み言葉と同じように「不幸が重なる」という意味をもつため、弔事の案内状には避けるべきです。
案内状には白無地の一重封筒を、返信用はがきを同封する場合は角封筒を選びましょう。葬儀社や印刷会社の文例集を利用すれば間違いが起きにくいですが、自作する場合も細心の注意を払い、失礼のないように心がけましょう。
まとめ
忌み言葉を避けることは、ご遺族への配慮を示す重要なマナーです。社会人として、または遺族として葬儀に出席する際には、忌み言葉の言い換えを心がけることで、失礼や不快感を与えず、適切な対応ができます。常識ある行動を心がけることで、相手に対する深い配慮を示しましょう。